弁周囲逆流閉鎖セット 
適正使用指針

適応基準

  1. 1. 大動脈弁位または僧帽弁位における人工心臓弁留置術後の人工弁周囲逆流に起因する症候性の心不全もしくは機械的溶血性貧血を有し、かつ外科的手術リスクが高く、本品による治療が当該患者にとって最善であると判断された患者を対象とする。ただし、経カテーテル心臓弁に発生した人工弁周囲逆流を有する患者を除く。
  2. 2. 大動脈弁位の治療は原則、逆行性アプローチとする。
  3. 3. 僧帽弁位の治療は原則、経心尖部アプローチとする。ただし、術前の全身状態が良好でない患者やワイヤーを通過させることが困難であることが推測される場合には、順行性アプローチを代替手段として選択することも可能とする。

施設基準

  1. 1. 冠動脈に関する血管内治療(PCI)が年間100例以上あること。
  2. 2. 経食道心エコー検査を年間100 例以上実施していること(うち、術中経食道心エコー検査を年間30 例以上、それ以外の診断目的の経食道心エコー検査が年間50 例以上とする)。
  3. 3. 心臓血管外科を標榜している心臓血管外科専門医認定修練施設で、開心術(OPCAB を含む)の症例が年間100 例以上あること。
  4. 4. 僧帽弁置換術もしくは形成術を年間20例以上実施していること。
  5. 5. Brockenbrough 手技(経皮経静脈的僧帽弁交連切開術、肺静脈隔離術等。ただし、経カテーテル心房中隔欠損閉鎖術を除く。)を年間20 例以上実施していること。

新規術者要件

術者は、TA(経心尖部)、TF(経大腿)のアプローチごとに認定するものとする。

TAおよびTFアプローチ術者共通要件
  1. 1. 日本国の医師免許証を有すること。
  2. 2. 施設基準を満たす施設に所属していること。
TAアプローチ術者要件
  1. 3. 心臓血管外科を標榜している心臓血管外科専門医認定修練施設で、これまでに開心術(OPCAB を含む)手技100例以上を実施している経験と心尖部へのアプローチ(TA-TAVIなど)を経験していること。
TFアプローチ術者要件
  1. 4. Brockenbrough 手技(経皮経静脈的僧帽弁交連切開術、肺静脈隔離術等。ただし、経カテーテル心房中隔欠損閉鎖術を除く。)をこれまでに20例以上実施していること。

実施医要件

  1. 1. 本デバイスの研修プログラムを受講済であること。
  2. 2. 本デバイスを使用する認定されたアプローチの施術を2 例以上見学していること。
  3. 3. プロクターの指導のもと、経カテーテルPVL閉鎖術の実施施設において術者としてTAアプローチまたは経心房中隔(TS)アプローチによる僧帽弁位PVL治療を各3例以上行うこと。(実施医は、アプローチ別に認定することとする。なお、TFアプローチ認定は、TSアプローチによる僧帽弁位PVL治療によって認定することとする。)
  4. 4. 1~3のプログラムを終了し、人工弁周囲逆流研究会から実施医として認定されていること。

プロクター要件

  1. 1. 主術者として経カテーテルPVL閉鎖術を5例以上実施した実績があること。
  2. 2. 本品の実施医の認定を取得していること。
  3. 3. 本品の単独実施認定※を取得していること。
  4. 4. プロクターとして人工弁周囲逆流研究会から認定されていること。
  5. 5. 術中に起こり得る合併症及び、トラブルに対する十分な知識と判断能力を有すること。
  6. 6. 以下の学会資格を有していること。
    日本心血管インターベンション治療学会認定医(専門医・名誉専門医)、心臓血管外科専門医のいずれかであること。

※単独実施医、暫定プロクター(市販直後のプロクター)については、別途、細則にて定める。

その他

1. 設備機器
  1. ・ 全身麻酔ができ、経食道心エコーや麻酔などの装置を置く十分なスペースがあるカテーテル室を有する。ハイブリッド手術室を有すること。
  2. ・ 術中リアルタイム3D経食道心エコー検査が実施可能であること。
  3. ・ 緊急で人工心肺下の手術ができること。
2. 人員

以下の人員が常勤として在籍すること。

  1. ・ 日本循環器学会認定循環器専門医が2名以上在籍すること。
  2. ・ 心臓血管外科専門医2 名(うち1 名は修練指導者)を含め心臓血管外科医が3 名以上在籍し、緊急開胸手術が遅滞なく実施可能であること。
  3. ・ 日本超音波医学会認定超音波専門医(日本循環器学会認定循環器専門医、ないし心臓血管外科専門医を有する者に限る)、日本周術期経食道心エコー(JB-POT)認定試験合格者、ないし日本心エコー図学会が認証している「SHD 心エコー図認証医」、あるいは「心エコー図専門医」が1 名以上在籍すること。
  4. ・ 体外循環技術認定士が1名以上、在籍すること。
  5. ・ 実際の手技に当たっては、循環器専門医と心臓血管外科専門医、SHD心エコー図認証医もしくはJP-POT認定医がそれぞれ1名以上参加すること。そのほか麻酔医、心エコー施行医3名、治療チーム医師4名、看護師2名、臨床工学技士2名が参加することが望ましい。
  6. ・ 上記基準の人員を含めたハートチームが、手術適応から手技および術前・術中・術後管理にわたりバランスよく機能していること。
3. 施設
  1. ・ 心臓血管外科専門医認定機構の基幹施設ないし関連施設であること。
  2. ・ 日本心血管インターベンション治療学会研修施設または研修関連施設であること。
  3. ・ 日本循環器学会認定専門医研修施設であること。

留意事項

  1. 1. 症候性の心不全もしくは機械的溶血性貧血の判断基準は以下のとおりとする。

    • ・心不全症状

      僧帽弁及び大動脈弁置換術後(機械弁、生体弁を含む)中等度以上の有意な人工弁周囲逆流が存在し利尿薬等を含む最適な薬物療法にも関わらず、弁周囲逆流による心不全症状によりNYHA II 度以上の労作時呼吸困難症状があること。

    • ・機械的溶血性貧血症状

      人工弁置換後の弁周囲逆流により機械的溶血性貧血があり、症状を有する、あるいは貧血改善のために過去に輸血療法を必要とし、以下のいずれかの条件を満たすこと。

      • → 出血性貧血が否定され治療前90 日以内にHb<10g /dLかつLDHの増加かつハプトグロビン<10mg/dL を満たす検査結果が記録された有症候性の患者。
      • → 治療前90 日以内に機械的赤血球溶血の所見があり、2 単位以上の濃厚赤血球輸血が必要であった患者。
  2. 2. 使用成績調査

    • ・本品の市販後一定期間は製造販売業者が使用成績調査を行い、本品を使用した患者の情報収集に努める。実施施設および実施医師、追跡施設および追跡医師はこれに協力すること。
    • ・また患者には継続して追跡施設に通院可能であることを確認しておくこと
  3. 3. 指針の改訂

    • ・本指針は臨床使用の状況、使用成績調査の結果等により見直し、適宜必要な改訂を行う。
  4. 4. その他

    • ・本品は添付文書の使用上の注意を遵守の上、使用すること。